3匹の雄ネコ

4/7
221人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
名前を突き詰めただけでは終わりではないとアットも思ってる 【長谷川公博】の名前を元に、調べられるところまで調べ尽くすつもりだ アットは家に帰る前に何でも屋に寄った 「仕事終わったー?」 ドアが開く音を聞き付けた鮭児(けいじ)が、顔を出した アットが店を出たときと同じ体勢でパソコンを弄っている 「お前は…まだっぽいな?」 「そうなんだよー。タントくんに頼もうかな」 アットは、マウスを操作する鮭児の手を取ると、 「兄貴に頼まなくても、俺がやるし」 と言って一緒に動かした 「あとちょっとじゃん」 わざと鮭児の耳にかかるように呟く 「ほんと?5時間頑張ったからねー」 カチカチというマウスの音が事務所の中に響いた 自分から仕掛けた癖に、緊張でアットの手に汗がにじんできた 「(けい)…」 アットが鮭児の耳を(ついば)もうとすると、 「鮭児ー!アットいるー?!」 大きな音を立ててドアが開いた ズカズカと入ってきたのは、アットの兄の淡人(たんと)だ 「タント♡」 鮭児は、5時間へばりついていたパソコンからあっさりと離れ、タントの元に駆け寄った 一気に緊張が解けて、アットはホッとしつつもガッカリした これもいつものことだ タントは鮭児を軽くあしらい、 「アット、一緒に帰ろう♡」 と言った この関係に名前をつけるならなんなんだろう この3人は、こんな関係をもう10年くらい続けている
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!