3匹の雄ネコ

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酒屋の主人に教えてもらったバーは、新宿三丁目の、細い長い雑居ビルの地下にあった コンクリート打ちっぱなしの、味気のない階段を降りると、鉄の格子窓がはまった木製のドアがあり、openの札がかかっていた アットは、新規の客らしく、控えめにドアを開けた 「いらっしゃいませ」 店内は、ビルの外観から想像した通りの狭さだった カウンター席5つ、二人がけのテーブル席が2つ 店員も一人しかいない 「お兄さん、初めての方だよね?」 「はい。大丈夫ですか?」 「どーぞどーぞ。若くてかっこいいお兄さんは大歓迎だよ」 「あ…」 アットの口から漏れた声を聞いて、店員もすぐさま理解したようで、 「あっ…っていうことは…だってのは知らなかった感じかな?」 と苦笑いした アットは、一瞬でも動揺したことを後悔した そして、動揺を隠すためにコホンと咳払いをして 「幸田酒店から教えてもらって。この人を探してるんですけど…」 店員に写真を見せると、すぐに 「ああ、長谷川さん」 と言った 1軒目で当たりなんてツイてる、と思ったが、それだけ顔が広い男ということでもある 調べるなら、思った以上に用心が必要かもしれない アットは声のトーンを上げた 「そうそう!長谷川公博さん。友達が、六本木のクラブで会った時に新規オープン店を手伝うって話になったらしいんだけど、名刺無くしちゃったみたいで。事務所の場所とか調べても出てこないし、この界隈のひとなら知ってるだろうから、暇なら聞いて来てって言われて…」 店員は、店内には自分とアットしかいないにも関わらず声を落とした 「新規オープンって、例のお店?」 「いや、俺は詳しくは知らないんですけど…ご存知なんですか?」 「そうなんだ?プッシールームっていう、オナニー見せる店は知ってる?それのゲイ専門店作るから、キャストやりたいコがいたら紹介してって言わたことあるよ」 「それはいつ頃ですか?」 「うーん?1か月前くらいかな?そろそろオープンするんじゃないかな。あ、お兄さんも興味あるならやってみたら?人気でそう」 店員がニヤリと笑った 「いや、俺はそんなんじゃ…」 アットが否定しきる前に、客が立て続けにやって来て、店員はアットの前から離れてしまった このまま何も飲まずに帰るのもマナー違反だろうと、アットは壁にかかったアルコールメニューを見た その時、 「ここいい?」 と、一人の男性がアットの隣に座った
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