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ソマリの秘密
「ヒヤくんにサタゼンジのこと聞くんですか?」
プレイヤーが全員帰った後が、エチゼンとマサトの作戦会議の時間となった
「オーナーからは、あえて刺激するのもよくないから様子を見るよう言われた。ただ、サタゼンジがまた店に来るようなら、断ってもいいって」
「そんな簡単に断れますかね。あのウェイ、逆上するんじゃないんですか?」
「お前の偏見すごいな…」
そうは言ってもあの身なりでは、そういうことを起こしても不思議ではないとエチゼンは思った
「まあ、俺は単なる清掃スタッフですからカンケーないですけど、マサトさん、受付で殴りかかられてもやり返せます?」
偏見がどーのと言われたから少し意地悪して言い返してみる
マサトにはしっかりと効いたようで、「う~ん…」と自信なさげに唸った
「いざとなったらスタンガンですね。それじゃあお先に」
エチゼンはリュックを背負って店を出た
プッシールームが入るビルにはエレベーターがない
エチゼンがリズミカルに階段を降りていると、3階と2階の間の踊り場にうずくまっている人影があった
「あれ?ヒヤくん?」
30分前に帰ったはずのヒヤだった
「こんなところでどうしたの?体調でも悪い?」
エチゼンは、ヒヤに近づいて初めて、足元に爪が散乱していることに気がついた
「あ…」
エチゼンは踏み出した足を引っ込めた
ヒヤはそれを見ると、スッと立ち上がって、階段を降りていった
「ヒヤくん!」
エチゼンは、条件反射的にヒヤの肩を掴んだ
ヒヤが足を止めた
「ごめん!俺…」
「やっぱり気づくよね」
「え…」
「俺、やっぱりおかしいよね?」
振り返ったヒヤの目は、ぼんやりと淀んでいた
エチゼンはとっさに、
「ヒヤくんって、ゲーム好き?」
と聞いた
ヒヤの目の淀みが一瞬で引いていくのを、エチゼンは間近で目撃して、嬉しくなった
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