ソマリの秘密

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エチゼンはロードバイクで出勤している ロードバイクを飛ばして20分の距離にあるため、終電後まで働けている だが、今夜はヒヤが一緒だ 新宿5丁目の交差点まで歩いてタクシーを拾った ※※※※※※※※※※ エチゼンは、古いが味のあるアパートに住んでいる 学生の頃から惰性で住んでいるが、昨今のレトロブームで、いつの間にか他の住民が皆オシャレビトになっていたときは驚いた 「散らかってるけど、てきとーに座ってください」 エチゼンは床に散乱している服や本を適当によけて、ヒヤが座れる場所を作った タクシーに乗る前にコンビニで買った弁当を取り出して電子レンジに入れる コンビニでエチゼンが、「好きなものを選んでいいですよ。てかコンビニだけど」と声をかけると、ヒヤは棚の前を行ったり来たりして、最後に118円の鮭おにぎりを差し出した (なにこの理想の彼女みたいな行動) そう思ったことは内緒である エチゼンは、ソワソワした気分を紛らわすために、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、1本をヒヤに差し出した するとヒヤは首を振って、 「ごめん。俺SSRI系の薬飲んでて、お酒飲むとダウナーになるから…」 「えすえすあーるあい?」 「うつ病の薬」 「あ…」 ビルの踊り場の時と同じように、微妙な空気が流れた するとヒヤはおにぎりのフィルムを剥がしながら、「大丈夫。慣れてるから」と呟いた トトトトトトトト エチゼンは、ヒヤに悟られないよう、テーブルの下で必死に指を動かして、SSRIを検索した (選択的セロトニン再取り込み阻害薬) 日本語で見ても何のことやらわからなかった エチゼンは、鳥のようにおにぎりを啄むヒヤを見た 聞きたいことは山ほどあったが、どれもセンシティブ過ぎて、触れることすらできない エチゼンは、諦めて、テーブルの下でスマホを手放すと、弁当を食べた
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