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「あのさ、サタゼンジって、どんな知り合い?」
ヒヤがビクッと肩を震わせて、指を唇に持っていった
「そいつ、こないだ、店に来たんだろ?」
エチゼンが追及すると、ヒヤは震えながら爪を噛んだ
エチゼンはその手をそっと握った
握っていないと、ヒヤは爪と皮を剥いてしまう
それだけいまのこの状況が、ヒヤにはストレスなのだろう
「ほんと、何があったの…」
エチゼンは、この痛ましい心の持ち主を、なんとか救ってあげたいと思った
※※※※※※※※※※※※
「ゼンジは弟なんだ」
暖かいコーヒーを淹れてあげると、ヒヤは落ち着いたようだった
「俺の本名は佐田冷次って言うんだけど、ちょっと前までレイって名前でゲイビに出てて」
「ゲイビ…?」
「君はノンケっぽいもんね」
レイは寂しげに笑った
「てか、俺の名前、越前浩介だけど…」
「コースケ?」
「そう」
ヒヤは、エチゼンの名前を胸に刻み込むように頷いて
「コースケは、そういうの観たことある?」
AVは観るには観るが、普通の男女モノ…
いや、普通とは言いがたかったが、少なくともゲイビは範囲外だ
「俺は、いわゆるウケって言って…」
「ウケ…」
それならわかる
プッシールームのプレイヤーの中にも『ウケ』や『タチ』がいるからだ
「俺がウケに目覚めたきっかけが、弟のゼンジなんだ」
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