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京一は頭をかいて呟く。
といっても京一もまだ27歳で、まだまだ若く男らしい。
京一と香澄が恋人同士だと説明されても、違和感はなかった。
「もう、19だよ?」
そう言われて香澄を見ると、もうその目に涙は浮かんでいなかった。
真っ直ぐに京一を見つめている。
その目に京一のほうがたじろいでしまいそうになる。
「今より全然人気がないとき、ファンに足を掴まれてこけたこと覚えてる?」
「あぁ」
それは京一が香澄ひとりをスカウトして2年が経過したときのことだった。
香澄はあの時まだ17歳だった。
いつもどおり低いステージでのライブ中、ファンのひとりが踊っている香澄の足首を掴み、転倒させたのだ。
ステージ上で思いっきりこけてしまった香澄は泣くことも忘れてそのファンを睨みつけた。
その時咄嗟に京一がかけつけて、抱き起こしながら「泣け」とささやいたのだ。
それで我に返った香澄はボロボロと涙をこぼしはじめた。
会場中は香澄の涙に沸き、香澄をこかせたファンはそのまま退場することになった。
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