目覚め

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目覚め

暗くてとても深い海の底からどんどん引き上げられるような感覚がして、保川友美は目を覚ました。 目を開けた瞬間は視界がボヤけて景色をはっきり見ることはできなかったけれど、すぐにピントが合って周囲を確認することができた。 友美の視界に最初に入ってきたのは灰色のコンクリートの壁と床だった。 第2会議室? 友美の勤めている会社の第2会議室がちょうどこんな感じだったので、咄嗟に頭の中でそう考える。 しかし視線を更にめぐらせて見たとき、部屋の中に窓がないことに気がついてここが第二会議室とは別の部屋であることがわかった。 壁の一面には大きなモニターが天井から下がっているが、それ以外に机や椅子といったものもないし、ホワイトボードもない。 部屋の天井付近には換気扇がついていて、それがカラカラと回る音だけが聞こえてきている。 ただそれだけの部屋。 本当になにもない。 なにもないが、その代わにというように友美の隣に倒れている紺色のスーツを着た男性の姿があった。 友美はその人物を見つけた瞬間大きく息を飲んだ。 「社長!」
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