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友美は咄嗟に声を張り上げて、隣の男の方を揺さぶった。
男の長い睫毛が小刻みに揺れたかと思うとゆっくりと両目がひらかれた。
スッと通った鼻筋に頬にかかるサラリとした髪。薄く開かれた唇からは白くて歯並びのいい歯が少しだけ除いている。
「ん……」
男は顔をしかめながら上半身を起こし、部屋の中を見回した。
「ここはどこだ? 会議室……でもないみたいだし」
「私にもわかりません」
友美は左右に首を振り、素直に答えるしかなかった。
なにせ自分も今目を覚ましたところだ。
社長である中平宏と社長秘書である友美が得たいの知れない場所で目を覚ましたことに、少なからず不安は膨らんでいく。
イベント会社を運営している宏のライバルは意外と多く、他社からうらまれている可能性は十分にありうるからだ。
2人はゆっくりと立ちあがって部屋の中を確認してまわることにした。
そしてすぐにわかったことがある。
「出口がないな」
宏が顔をしかめて言い、友美はうなづく。
そう、この部屋には出口らしき扉がなかったのだ。
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