三日月の簪、星のネックレス

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三日月のホワイトピンクの簪を、うねるような、青く光る頭髪に刺し、ホワイトブルーの星のネックレスを金の胸毛辺りで揺らす、とてつもなく巨大な男が、月面をドシンドシン、と歩いていた。しかも、そんな大男なのに、そいつは涙を流していた。その涙は血の色、つまり真っ赤であった。ジュスティ-ヌ!大男は、きらきらとした大声で叫び、月面をビリビリと揺らした。ジュスティ-ヌ!ジュスティ-ヌはいませんぜ.....金のガラスで出来たネズミが、大男の回りを、シャキシャキと回りながら言った。ネズミめ!大男は、金のガラスで出来たネズミを踏みつけようとしたが、ネズミは、穴の中にするん、と入って逃げた......ジュスティ-ヌはいませんぜ......ジュスティ-ヌ!大男は、また、叫んだ。すると、また、月面がビリビリッと揺れた。ドシンドシン、と大男が歩くと、月面に埃が立った。ジュスティ-ヌ!そのとき、大男は、クレーターに躓き、ひとつよろけたあと、ズシィィィ-ンと、大きな音を立てて、転んだ。すると、ビリビリッビリビリッ、月面に罅が入り、真っ二つに、子供が煎餅を簡単にふたつに割るように、ギザギザに割れた。ああああAh!......大男は、割れ目から、真っ逆さまに、宇宙の闇に、堕ちていった。すると、硬質の、ガラスのように透きとおった、白みがかった宇宙の白鳥が、ローソクの炎のように、きらめきながら、大男の廻りを巡った......ジュスティ-ヌさんをお探しなのですか?......ジュスティ-ヌ!ジュスティ-ヌ!ジュスティ-ヌ!......それが、白鳥たちの見た、大男の最期だった。白鳥たちは、きらきらっと、上昇すると、静かに銀白色に光る大きな丸いお月様へ向かった。お月様は元の通りで、あの大男はもう居ない。不思議な幻を見たのだろう、宇宙の白鳥たちは皆、頷いた..................ジュスティ-ヌは月の青い立派な教会で、白のウェディングドレス姿で、恋人のマロイとの結婚式の真っ最中であった。月の教会の頂上を、幾羽もの宇宙の白鳥が、流麗に、白い花のように点々と舞い続けている。
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