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「ぽぽ、ここしか帰るとこないもん……っ」
「うううちは、天様の、嫁。だ、だけど、お庭のみんなと、け、結婚したと思ってる」
「私も、そう思ってる!」
思わず同意すると、ここに来て初めて、困ってるみたいに不器用な菖ちゃんの笑顔を見られた。
「みんな、ありがとう」
向日葵さんは血管の浮いた手を胸の下で重ね、花嫁たちを見回した。
「天様は、穏やかに微笑みながらお庭を出られました。私たちの支援者はたくさんいるし、相談している弁護士さんも、実刑や強制退去はあり得ないとおっしゃっています」
しんと静まり返った食堂で、最初の花嫁は、ふわりと微笑んだ。
「だから、待ちましょう」
天様みたいに、みんなを安心させたい。そう思っているだろう向日葵さんの小刻みに震える手を見ながら、私は答えた。
「私、待ちます!」
「ぽぽも待つ! だって、天様のお家もここしかないでしょう?」
ぽぽちゃんの声に、楓さんが上向きに弓を引くジェスチャーをした。
「あたし、弓買ってもらえたらドローン撃ち落としてやりますよ!」
「あぁ、楓は元アーチェリー部でしたね」
久しぶりに見た楓さんの白い歯に、ホッと心が軽くなる。それは向日葵さんや他の花嫁も同じらしく、場の雰囲気が明るく、柔らかくなった。
「待ちます」
「天様をお慕いしてますから」
「それしか、できませんし」
花嫁たちが口々に前向きな意思を示し、向日葵さんはにっこりと笑った。
「それが一番、天様に喜んでいただけることだと思います」
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