先輩、僕は。

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僕っていう女の子どう思いますか? 女の子らしくありなさい。女の子でいなさい。スカートを履きなさい。かわいい服を着なさい。私って言いなさい。 これを強制される世の中。僕は。好きじゃない。 昔から私という言葉が世界でいちばん嫌いだった。 「また僕って言ったわね。貴方は女の子なの。だから。私。ほら言ってみなさい。」 「...。僕。」 深いため息とともに僕を軽蔑したような目で見る母親。お姉ちゃんは僕に呆れて無視をするように。家族の中でも浮いた存在になってしまった。僕と呼ぶことがそんなに悪いことなのか?3歳の頃の僕にはよくわからなかった。 「こんなんじゃまたお義母さんに怒られるわよ。」 父親と母親は僕のことで頭を抱える。 僕は僕って言いたい。ただそれだけなのに 「なあひかる?おとうさんは男の子だから僕とか俺とか言える。でもひかるはどうだ?女の子だろう?じゃあ私って言うんだよ。お姉ちゃんだってそうやって言ってるだろ?」 父親は姉に優しく笑いかけ僕には真剣な眼差しを向けた。 「僕は、僕なんだ、スカートも嫌い、髪の毛もやだ、なんで女の子らしく居ないといけないの?なんでなんで」 駄々をこねると父親から平手が飛んできた。 「うるさい。いい加減にしなさい。そんな駄々をこねるならうちに居なくていい。でていけ。」 そんなことを言われ続けて僕は僕のまま高校生になった。 変わったことといえば父親と母親は離婚した。 僕のせいらしい。でもそのことくらいで離婚するなら元々結婚しなければよかった話だ。そう思って過ごしている。僕は僕の生きたいように生きる。そうきめて高校を卒業したら一人暮らしする予定だ。あんな方に嵌められた人生なんてゴメンだ。 お姉ちゃんは僕とは違って゛出来る子゛だから医者になるそう言って勉強に励んでいる。可愛くもなく眼鏡をかけて髪をふたつに結わえて。どこからどう見てもただの真面目な女の子だった。 「おいひかる!お前ってホント男みてぇだな」 野球の奴らが僕を見て笑う。いじめられてる訳じゃない。男子特有のノリで彼らとは仲がいい。 ごりのすけ、とよばれる彼は最も仲がいい。ゴリノスケは野球のまとめ役で次期部長と噂されて体格も色もゴリラみたいなとこからゴリノスケと呼ばれている。アホで野球バカで間抜けな顔。ほんと猿みたいなゴリラみたいな。 「また一人で帰る気かよ。一緒に帰るぞ」 そう言って僕の方に近寄ってくる。家に帰りたくない。そう思って小学生の頃1度家出をしてしまったことがある。 スーパーの外のトイレのところでずっとうずくまっていた僕をゴリノスケは見つけてくれた。 「女のくせに男子便所はいるなよな!」 そう笑ってくれた。その日から帰る時はずっと一緒で家まで送り届けてから帰る。もう家出なんてするはずないのに。 「急がねぇと先帰るぞー」 そんなことを返して僕はゴリノスケがいそいそ準備するのを眺めていた。自転車に足をかけた瞬間僕はスピードを出して自転車をこいだ。 それを見たゴリノスケは僕以上のスピードを出して追いかけてくる。 「おいー、先に行くなよひでぇな」 そう笑いながら川沿いを通り公演をぬけ家に着いた。 「じゃあな」ゴリノスケは背中を向けてどんどん小さくなっていく。 小学生の頃のゴリノスケと全く変わらない背中。安心感がある声。 またあしたと小さく手を振りいえに入った
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