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初恋の記憶 3
あのとき、どうしてあんなに嬉しい気持ちになってドキドキしたのかは、それからしばらくわからなかった。
『特別』だと感じたのかもしれない。私だけに聞かせたくて、しかも私が歌詞を書いていいなんて。
下野くんのことが好きだったかどうかは、よくわかってなかったと思う。でも彼のなかで特別になれたことが嬉しいと思ったということは、私のなかでも彼は特別だったんだろう。
初恋だったんだなとわかったのは、下野くんに会えなくなってからだ。
一度だけ、デートみたいなことをしたことがあった。下野くんがあの曲を録音したカセットテープを渡したいと言って。
部活が休みになった日曜日だった。なぜあの日、休みになったのかは覚えていないけれど、下野くんは素敵なデートコースを考えてくれていた。
映画を観て、ランチを食べて、飛行機を見に行った。そして稲川の河川敷公園であの曲が入ったカセットテープを預けてくれた。
なんの映画だったかは忘れてしまったけれど、ランチは商店街のお店の玉子サンドだった。
学校でも一緒にお弁当を食べていたのに、あのときはすごく恥ずかしかった。前に座っている下野くんが制服でなかったからかもしれない。
あの日、初めて彼が目の前に座ったときに、学校でない場所に二人でいることをすごく意識してしまった。
今さら十四歳のかわいい自分を思い出したのは、やっぱり地上からあの曲が聴こえたからだろう。
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