たっくんとおはなししたい

2/5
前へ
/53ページ
次へ
「たっくんのお迎え、多分あと三十分くらいかな。お姉さんが構わなければ待っていただいても、こちらは構いませんよ。」 にこっとたっくんのお迎え情報を教えてくれる先生。 「先生、ありがとうございます。」 三十分なんてノープロブレム。 ちょうど読みかけの小説がバックに入っていたりする。 あたしはみぃに視線を戻し、言い聞かせるように口を開いた。 「……みぃちゃん、たっくんのお迎えが来るまでだからね。お迎えがきたらみぃちゃんも帰るんだよ。」 あたしの言葉に、みぃはとびきり嬉しそうな笑顔を浮かべ、「うんっ!ありがとう!」と、たっくんの側へ駆けていった。 そして、二人で積み木を積み上げはじめる。 ……それにしても、どうして急に? 今まで迎えに来たら、すんなりとグズることもなく帰ってたのに…。 首を傾げていると、先生が静かに話し始めた。 「……今日、みぃちゃん、お気に入りのハンカチをなくしちゃったんです。」 「あの水玉模様のピンクのハンカチですか?」 さすが女の子といわんばかりに、五歳のみぃは持ち物や服に対してのこだわりが最近すごい。 ピンクのハンカチもその中の一つだ。 みぃのお気に入りで、簡単に手放そうとしない。 積み木で遊ぶ小さな二人を、あたたかい眼差しで見守りながら、保育園の先生は続けて口を開いた。 「そのハンカチです。お昼過ぎにみぃちゃんが『ないー!』って、泣いて泣いて。どうしようかと思っていたら、たっくんが見つけてきたんですよ。植え込みの中に落ちてたって。」 「たっくんが見つけてくれたんですね。それはよかったです。」 見つかってなかったら、今もみぃは間違いなくぐずっていただろうな……。 たっくん感謝。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

442人が本棚に入れています
本棚に追加