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「たっくんのお迎え、多分あと三十分くらいかな。お姉さんが構わなければ待っていただいても、こちらは構いませんよ。」
にこっとたっくんのお迎え情報を教えてくれる先生。
「先生、ありがとうございます。」
三十分なんてノープロブレム。
ちょうど読みかけの小説がバックに入っていたりする。
あたしはみぃに視線を戻し、言い聞かせるように口を開いた。
「……みぃちゃん、たっくんのお迎えが来るまでだからね。お迎えがきたらみぃちゃんも帰るんだよ。」
あたしの言葉に、みぃはとびきり嬉しそうな笑顔を浮かべ、「うんっ!ありがとう!」と、たっくんの側へ駆けていった。
そして、二人で積み木を積み上げはじめる。
……それにしても、どうして急に?
今まで迎えに来たら、すんなりとグズることもなく帰ってたのに…。
首を傾げていると、先生が静かに話し始めた。
「……今日、みぃちゃん、お気に入りのハンカチをなくしちゃったんです。」
「あの水玉模様のピンクのハンカチですか?」
さすが女の子といわんばかりに、五歳のみぃは持ち物や服に対してのこだわりが最近すごい。
ピンクのハンカチもその中の一つだ。
みぃのお気に入りで、簡単に手放そうとしない。
積み木で遊ぶ小さな二人を、あたたかい眼差しで見守りながら、保育園の先生は続けて口を開いた。
「そのハンカチです。お昼過ぎにみぃちゃんが『ないー!』って、泣いて泣いて。どうしようかと思っていたら、たっくんが見つけてきたんですよ。植え込みの中に落ちてたって。」
「たっくんが見つけてくれたんですね。それはよかったです。」
見つかってなかったら、今もみぃは間違いなくぐずっていただろうな……。
たっくん感謝。
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