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約一時間の残業。
家族にみぃの迎えを頼んだが、こういうときに限って誰も行くことができなかったりするものだから……
仕方なく保育園にお迎えが遅くなることを連絡すると、快く『十九時までは大丈夫ですよ』なんて返事をもらえ、今、大急ぎで保育園に向かっている。
時間は十八時三十分。
みぃ、怒ってるかな…?
お迎え、最後の一人かな…?
仕方のないこととはいえ、申し訳ない気持ちになりながら保育園の駐車場に車をとめ、教室へ全力疾走。
「すみません!遅くなりました!」
そう口にし教室のドアを開くと、いつものように積み木で遊んでいるみぃとたっくんの姿。
みぃが一人じゃなかったことと、幼い二人のいつもの仲の良い姿にほっと口元が綻んだ。
……あれ?
たっくんの迎えは、いつも十八時頃よね?
あたしと同じタイミングでたっくんのお宅も残業なんて偶然はないだろうし……。
「お姉さん、遅い時間までご苦労様です。」
いつもの保育園の先生が優しい笑顔で出迎えてくれる。
「えっと…、あの…、お疲れ様です。えと……、たっくんのお迎えって……」
あたしの言おうとしていたことを保育園の先生はすぐに察してくれたようで、あたしから視線をそらし、おままごとスペースの方へ視線を向けた。
あたしもそれを追うように視線を向けると、いつもあたしがいる場所に一人の男の人。
清潔感のあるほどよい長さの髪は、たっくんと同じような色素の薄い薄茶。
ネイビーのスーツを着こなし、それがとてもよく似合っている。
穏やかそうな印象を受ける整った顔立ち。
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