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あたしはがんばって相手の気分を害さないよう、にこりと笑顔を浮かべた。
………え?
一瞬、寂しそうな顔をしたような……
しかし、すでにそこに浮かんでいるのは穏やかな微笑。
……気のせい?
「みぃちゃんのお母さん、お名前は?オレは野村和也といいます。」
「……伊藤……、伊藤千晶……です…。あと、……お母さんじゃなくて……叔母になります。」
言葉がたどたどしい。
自分でもなんとかできるものならなんとかしたいけど、苦手なものはしょうがない。
「みぃちゃん姪っ子になるんですね。オレと同じだ。隆は兄貴の子供で甥っ子なんだ。」
そんなこと、あたし聞いてない…。
聞いてないけど…、この人、お父さんじゃないのね…。
……てか、たっくんて隆って名前だったのね……。
今更な情報に、自分は抜けてるなーなんて思ってしまう。
ちなみにみぃは、未来なんて名前。
「先生に聞きました。いつも隆の迎えが来るまで待ってくれていたんですよね?」
「ええ……、まぁ……」
かわいい姪っ子のお願いだから……
「そんなこととは知らず、御礼の一言も言わず、今まで申し訳ありません。」
本当にすまなさそうに話すこの人は、きっといい人なのだろう。
「……みぃのお願いを聞いて、勝手に待ってるだけなので。気にしなくてかまいませんよ。」
本当に気にしないで欲しい。
そして、距離が近いので離れて欲しい。
……さすがにそこまで口に出しては言えず。
あたしは苦笑いを浮かべつつ、少しだけ…、本当に少しだけ後ずさり。
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