たっくんとおはなししたい

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たっくんとおはなししたい

「みぃちゃん、お迎えきたわよー」 いつもお世話になっている保育園の先生が教室の中へ……、正確には中で遊んでいるみぃに向かって声をかけてくれる。 今日は残業することなく定時上がり。 なので、いつもどおりの十七時半に保育園に到着したのだけれど…… 保育園指定の黄色いスモックにオレンジのズボン。 ツインテールで大きなくりくりの目をしたみぃがてててとあたしの側へ駆け寄ってきた。 「ねぇね、おねがいがあるの。」 そう言ってあたしのTシャツの裾をぎゅっ。 ……うん、我が姪ながらすごく可愛い。 「みぃちゃん、どうしたの?」 あたしは百五十センチ程と背は高くないけど、そんなみぃと視線を合わせるようにしゃがみ込み、みぃに向かってニコリと微笑んだ。 「あのね、みぃ、たっくんとおはなししたいの。たっくんかえるまで、ここにいちゃだめ?」 「たっくん?」 同じ保育園の子なんだろうなとは思うけど…… そんなあたしに「あそこで積み木を積み上げているのがたっくんですよ。」なんて助け舟を出してくれる先生。 みぃと同じ黄色いスモックの、勝気そうな顔をした男の子。 真剣に倒れないよう積み木を積み上げている。 色素の薄い薄茶の髪が積み木を置くたびにふわりと揺れた。 「かわいい男の子ですね。」 「えぇ。とっても活発で、元気な子なんですよ。」 先生の口ぶりだと、子供らしい元気な子みたい。 「ねぇね、だめ?たっくんといっしょにつみきしたいの。」 うるうるさせた大きなおめめでお願いされたら…… 「……先生、ご迷惑じゃなければ……」 多少待つくらい、あたしは構わない。 帰ったって別にすることもないし。 長電話するような恋人も、アプローチしたい気になる人もいない。
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