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首筋に当てられた冷たい感触に我に返る。
「冷たっ」
「ぼーっとして、日陰に入ってりゃいいだろ」
「あ、ん、サンキュ」
一周して来たのか、ミツキは缶コーヒーを店主にも差し出す。
「おじさんもどうぞ」
「お、ありがとう。悪いね。まぁ、こんな処にしとくか。薬が少し残ってるんで、お兄さんにやるワ。呉々も湿気には気をつけて大事にな」
「ありがとうございます」
薄い布に包まれて手渡されたオペラグラスは日差しを浴びて、キラキラと光っていた。
「別物じゃん。これで未来も明るいな」
ミツキはそう言って笑った。
「あの…これ買った時、覗くと未来が見えるって言われたんですけど…」
「あー、ま、そんなことを言ったかもしれんなぁ。お兄さん、未来が見えないからって返品に来たんじゃあるまいな」
「そんなことはないです」
「まぁ、それならそれで引き取っても構わん。こいつを探してる人も居るからな」
「いえ…ただどういう意味だったかと思って…」
「うん、そのまんま。欲しいけど迷ってる客に使う…殺し文句みたいな」
ミツキが隣で可笑しそうに笑っている。
「こいつ、おじさんの殺し文句信じてましたけどね」
「余計なことを。別に…信じてたわけじゃないし…」
「そうかぁ?」
「そりゃ悪いことをしたな。まぁ、大事にしてくれたら、見られるかもしれんしな。こういう古い道具を扱ってると、時々不思議なことにも出くわすもんだし。口から出任せもホントに化けるかもしれん」
店主はそう言って、何だか愉快そうに笑った。
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