クジョウ君

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クジョウ君

店主に礼を言い、見るともなしに右左の店を見たあとで、昼食。 彼女を連れて行きそうなイタリアンカフェでビールを飲みながら、大して代わり映えもしない近況報告。 テーブルの上のオペラグラスをミツキが覗く。 「凄く綺麗になったなぁ。こんなのが7つも並んでたら一寸カッコいいかも。親父はやっぱりイカサマだったけどな。笑える」 「なんだっけ。鏡とシガレットケースと小箱と懐中時計と…」 「ブックマーカーにフォトフレーム。あ、こんな所にネームがある。kujoh クジョウ?持ち主か?製作者かな?揃ってた方が価値が上がるんだか、探してるのは「銀の匙」とかいう骨董屋らしいよ」 「へぇ。店の名前だけに?価値っていうか、そもそも値がつくものなのかね?あの人も何処で店持ってるの?」 「昔は構えてたらしいけど、破産?今は車て回る露天商らしい。今言ったそもそも値段はあってないような物だから、大損したって」 「ミツキ、詳しいね」 「母さんに聞いた」 「おばさん、元気?」 「ああ、今日会うって言ったら、亮ちゃん久しぶりに連れて来なさいよ。とか言ったくせに、出掛けるんだったわとか、相変わらずそんな感じ。帰省してる?」 「んー、1年に1、2度。夏休み、帰るかなぁ」 「偶には親孝行しろよぉ。なんだかんだで地元に戻ってないのって亮ちゃんだけなんだからな」 「そうだなぁ」 離れていても、いつか帰る場所がある。
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