プロローグ

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プロローグ

 私の名前は高橋真理、十七歳。高校受験を頑張った私は最難関の私立女子高に合格することが出来て、横浜から都内へ電車で一時間の通学をしている。その通学電車の中で、私はいつの間にか一人の男の子を探す様になっていた。  私の最寄り駅のみなとみらいからは必ず座って都内まで通えるんだけど、同じ車両に横浜駅から乗って来る男の子が居たの。私は渋谷までこの電車に乗るんだけど、彼は中目黒で降りていく。そして一度、彼のバックからサッカーボールが覗いていたことがあったから、彼がサッカーをしているんだと思っていた。  何故、彼に興味を持ったかって? もちろん背が高くて私好みの美男子(イケメン)だったのは当然だけど、それだけじゃないの。  彼は横浜駅で必ず席を確保するんだけど、高齢の方や妊婦さんなんかを見ると直ぐに席を譲ってあげていた。そして席を譲られた方が「ありがとう」っていうと満面の笑みで頷くの。その笑顔が本当にカッコよかった。  そしてたまに私の横に彼が座ることもあって、私の肩が彼に触れると心臓が爆発しそうだった。でもそんな時は、彼は必ず直ぐに席を譲ってしまって、私の幸せはあっという間に終わってしまうんだけど……。  いつか私は名前も知らない彼のことに片想いをしている自分に気付いていた。でも声を掛ける勇気も無くて、彼と同じ電車で通えるだけで幸せと自分に言い聞かせていた。  でもその小さな幸せも長くは続かなかったの。
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