SWITCH

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 頭からすっぽりと薄いビニール袋を被せられた志村は、サッカーボールとなった。当たり所が悪ければ死んでしまう。俺は彼の頭が蹴り飛ばされるたびに、もうやめろ! と叫びだしたくなった。けれど、それは言えなかった。隣に居る東が俺の背中にずっと手を置いていたからだ。  叫びだそうものなら、直ぐに首を絞められるような位置に、彼の大きな手が置かれていた。東は志村がいたぶられているのを楽し気に眺め、時折、 「下手クソ、もっとちゃんと蹴れよ!」  と罵声を浴びせた。この狂気じみたゲームを楽しんでいる。一見そんな風に見えたけれど、違う。  ――彼は俺の反応を見て楽しんでいる。  ふと向けられる眼差しには、ねっとりと絡みつく様な粘り気があり、それは間違いなく俺を観察しているようだった。  何が目的なのだ。  ドムはサディストが多いと聞くが、彼もまた真性のサディストなのだろうか。いや、そうであってもそうでなくても、どちらでも良い。どちらにしたって趣味が悪過ぎる事には変わりない。
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