SWITCH

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 最初は両腕で頭をガードし、微かな抵抗を見せていた志村だが、徐々に圧倒的な暴力に屈していき、最後はぐったりと床に倒れていた。俯せの背中が上下している事から、彼にはまだ息があり、生きているという事が窺える。 「……飽きた」  東の不意の一言に小さなサッカーグラウンドが静まり返る。東の一言に「俺も疲れたわ」と誰かが呟き、次々に「止めよう」と場がしらけて、お開きとなっていく。俺はずっと緊張で硬くなっていた肩の力を落として、息を吐いた。隣にいた東は、そんな俺に浅く笑って立ち上がると、鞄を肩に掛けて「タピオカ飲みに行こ」と、俺に笑いかけてくる。 「気分悪いから帰る」  俺は東の顔を見ないままに、教室出入り口へと急いだ。その際、志村の頭に被された白いビニール袋の内側から、べっとりと血が付着しているのが見えた。それは床にも溢れて、まさにテレビドラマの演出なら、確実に志村は死んでいる。  最悪だ。  俺はそれを視界の端で見つけてしまった事を後悔しながら、昇降口へと急いだ。 「礼、また明日ね」  扉を閉める直前で、東がそんな事を言った気がしたけれど、俺はそれに聞こえないふりをして、自転車のある駐輪場の花壇へと急いだ。
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