SWITCH

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***  とっくに部活動も終えた日暮れの校舎は薄暗く、夕日の色を飲み込んでいく群青に空も空気も、廊下も支配されていた。  閉ざされた門を越えて、既に施錠されている昇降口から、一年生のクラスへと迂回する。一つ一つ窓の施錠を確認していると、からから、と施錠忘れの一枚が開いた。  俺は窓を飛び越えると、靴のまま学校内へと侵入した。辺りの暗さと人気のなさに、妙に心臓が音を立てる。誰かに見つかって、怒られる程度で済めばいいが、警察沙汰になったらどうしよう。  無人の教室を目の前に、そんな事がちらりと脳裏を過る。しかし、そんな事よりも、志村が未だにあの場に倒れたままだったら、それこそ問題だ。俺はそっと廊下に顔を覗かせる。外よりもずっと静寂が身近に息を潜めている気がした。突き当りは薄暗く、非常灯だけが妙に明るく点滅していた。靴を脱いでそれを手にすると、旧校舎へと急いだ。一旦二階への階段を上がり、渡り廊下を経て、三階の旧音楽室を目指す。  急いでいたせいか、不安からか、心臓がどくりどくりと、俺とは別物の個体のようにこの身体の中で鳴って震えている。 息が苦しい、死んでないよな、もういないよな。扉を開いたらそこにはもう、血だまりも志村もいなくて、いつものような埃っぽい部屋が広がってるんだよな?
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