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「……青」
「あお? 青な?」
何故合意をしてしまったのか、自分でも分からない。ただ、彼の双眸の奥深くに映り揺らぐ炎を見つめていたら、もう拒みようがない気がした。俺は確認してくる志村の言葉に一度だけ頷いた。志村も、自分さえも信用しないまま、心はただ投げやりに、この場面の解決だけを願っていた。
解放されたい。
何もかもから解放されたい。
「ニール。お座り」
丁寧に耳元で囁かれると、鼓膜の奥までじんわりと届く声の熱と湿り気に、腹の奥がずくりと疼く。
これがサブ。
俺は窓際の壁から背を離すと、ぺたりと正座を崩し座り込む。それを見つめていた志村は、
「正座」
と、俺の今居を指摘した。その声音は優し気な空気を纏いながら、身体の中に滲み込んでくると、俺は彼の指示通りに堅い板張りの床に正座する。
「ステイ、そのまま」
膝に手をついて、俺は彼の言葉通りにその体制を崩さぬままに耐える。正座なんてし慣れないせいか、少し身体を支える足が痛いが、堪えられないとわがまま言う程でも、苦痛でもない。
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