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「ルック。こっち見て」
言われて視線を上げる。志村は立ち上がると、俺から数歩後退り、俺を見下ろしていた。夕方のあの件から、一気に形勢逆転されてしまった事実が、彼の眼差しから降りかかる。
何をされるのだろう。
今までの仕返しか。
そんなのも、もうどうでもいい。
そう思いながら視線が下がると「ルック」と再度指示される。これがサブとしての本能なのか、簡単な彼のコマンドに俺の反発心は芽生える事もなく、素直に身体が従ってしまう。
「怖い?」
「別に」
「投げやり?」
「少し」
「頭に袋被ってサッカーするか?」
その言葉に思わず目を見開くと、
「冗談だよ。そこまで悪趣味な外道じゃない」
それはつまり、俺は外道って事か。
返す言葉も見つからずに、俺は膝上の拳を作る手を見つめた。
「ルック」
根気強く言われて、俺はいつの間にか俯いていた顔を上げる。
「ルックって言われたら、目を逸らすな。従えるだろ?」
言われると、彼の微かなグレイが俺の肌に纏わりつく。それは抗いようのない征服者の香りを纏い、俺から微かな抵抗も奪い去る。彼はゆっくりと俺に近寄り、しゃがみ込むと、同じ目線の高さから、俺を見つめた。
「シャツのボタン、外して」
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