SWITCH

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 志村はそう言うと、俺のネクタイを床に捨て、ワイシャツを脱がせた。微かな悪寒に肌が震える。すると、不意に志村の大きな体が覆い被さって来た。十分にある体格差と体重を使って組み敷かれると、真上から覗かれる。 「怖いんだな」  不意に言われた言葉に、恐怖に竦んでいた心臓が、ことりと、微かに動く。俺は視線を落とそうとして、すぐに志村のコマンドを思い出し、視線を戻した。 「良い子だ」  それを汲み取ってか、志村は微かに口元だけを綻ばせると、俺の額に柔らかくキスをした。  俺はゆっくりと離れて行く志村を見つめる。ぽつりと宿すような温かなその小さな灯一つに、凍てつき固まる何かが温められ、絆されていく。心に満ちる何かが、意識に反して、心地良く俺を支配していた。 「嫌だったら、セーフワード言えよ」  目を見たまま頷くと、彼の顔が寄って来て、そのまま俺の唇を、唇で覆い尽くした。食べるように唇を吸われると、甘苦しく息が詰まる。志村の掌が胸を這い、長い指先が偶然のように胸の飾りを掠める。偶然はゆっくりと確信へ変化し、親指と人差し指で、摘ままれ、弾かれた。普段意識せずに触れる場所が、引っ張ったりこね回されると、まるでそこに新しい器官ができたかのように感じる。
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