SWITCH

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 テレビの内容と重なって脳裏に思い浮かんだ、昨日のサブの茜色の背中が、瞼の奥にちらつく。俺はそれに頭を振って、皿の上にトーストを投げ置くと態と大きくため息を吐いた。  いじめがダサいという事、悪い事であるという事、そんな事は全てわかっている。それを分かった上で、俺達はあの不毛な行為に耽っては、日常の中から搔き集めた鬱憤をぶつけている。標的なんて本当は誰でも良かったのかもしれない。  ただ、サブと言うのは人間の中でも最下層の人種に見られがちだ。社会がいくら平等を叫ぼうとも、マクロな社会の中で平等が保たれているという現実は実に少ない。  特にダイナミクスと言う人種は主従を基本としているから、その社会の形は顕著に表れるかもしれない。  だから、多分、きっと……俺は悪くない。  俺はそう自分に言い聞かせるように、深い声で自分に言い聞かせる。あいつが苛めを受けているのも、苛めを容認するのも、例えあいつが死んだとしても。  俺は悪くない。 偶々身体のでかいサブが珍しいという事から、目を付けられ、その性に付け込まれた。そして、それがエスカレートしてしまった。彼にも非がない訳じゃない。彼は最初から俺達の嫌がらせに、一度として反抗しなかったのだから。
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