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「どうしておばちゃんが家に?」 「愛奈のことを気にしてるのよ。詳しい話はおばちゃん本人から聞きなさい。リビングで待ってるから」 母親はそう言い、部屋を出て行ってしまったのだった。 ☆☆☆ 近所だと言っても、裕子おばちゃんと顔を合わせるのは久しぶりのことだった。 事件が起こる前までは裕子おばちゃんのコンビニにもよく言っていたけれど、今はどんな顔で買い物にいけばいいのか、わからなかった。 「こんにちは」 しっかりと着替えを終えたあたしは、そう声をかけながらリビングへ入った。 裕子おばちゃんはソファに座って紅茶を飲んでいて、あたしに気が付くといつもの笑顔を浮かべてくれた。 「愛奈ちゃん。元気そうでよかった」 腰を浮かせてそう言う裕子おばちゃんに、あたしはお辞儀をして「ご迷惑をおかけして……」と、小さな声で言った。 こういう時、どんな挨拶をすればいいのかわからなかった。 すると裕子おばちゃんはプッと笑って「そんな堅苦しい挨拶、どこで習ったの?」と、聞いて来た。 裕子おばちゃんが笑ってくれたおかげで、緊張がほぐれて行くのを感じる。 よかった。
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