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怒っている様子じゃなさそうだ。 あたしが起こした事件のせいで、親戚周りにまでイタズラ電話で困った時期があったらしい。 あたしも被害者だと知れ渡ると同時に終息していったようだけれど、本当に大きな迷惑をかけてしまっていたのだ。 「あの、今日はなにか……?」 あたしは母親の隣に座ってそう聞いた。 すると裕子おばちゃんは大き目の鞄からファイルを取り出して、あたしの前に差し出した。 なんだろう? 疑問を感じながらファイルを開いてみると、それはコンビニ従業員用の接客マニュアルだった。 あたしはファイルから顔を上げて裕子おばちゃんを見た。 「愛奈ちゃん。うちのコンビニでバイトしない?」 変わらない笑顔でそう聞いてくる裕子おばちゃん。 「え……?」 突然の申し出に頭が付いていかず、あたしは隣の母親へ視線を向けた。 母親はうっすらと目に涙を浮かべている。 裕子おばちゃんは今日、これを伝えるために家にきてくれたみたいだ。 「あの……バイトって、いいのかな? あたしが?」 混乱して、うまく文章が作れない。
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