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「もちろんよ。愛菜ちゃんは事件の被害者よ」
裕子おばちゃんは真剣な表情になってそう言った。
修人に誘導され、修人に脅されて恋人を殺してしまった可愛そうなヒロイン。
世間で、あたしはそういう扱いを受けていた。
裕子おばちゃんの中でも、きっと同じような感じなのだろう。
「おばちゃんのコンビニに迷惑かけたりするかもしれないよ?」
あたしを雇ったとわかると、迷惑電話がくるかもしれない。
嫌な客も増えるかもしれない。
「あのね。世の中には何もないのに人を叩く人って、沢山いるのよ?」
裕子おばちゃんは手を伸ばし、両手であたしの手を握りしめてそう言った。
その手は母親と同じくらい暖かい。
「コンビニに入ると同時に怒鳴って来るお客さんだって、普通にいるのよ」
「そうなの?」
あたしは驚いてそう聞き返した。
「そうよ。クレームなんて日常茶飯事。だからね、嫌な人が来たからって自分のせいだって考える必要はないの」
そう言われて、あたしは母親へ視線を向けた。
「愛奈が自分で決めなさい。執行猶予期間でも、バイトはできるんだから」
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