返す

8/14
前へ
/133ページ
次へ
「もちろんよ。愛菜ちゃんは事件の被害者よ」 裕子おばちゃんは真剣な表情になってそう言った。 修人に誘導され、修人に脅されて恋人を殺してしまった可愛そうなヒロイン。 世間で、あたしはそういう扱いを受けていた。 裕子おばちゃんの中でも、きっと同じような感じなのだろう。 「おばちゃんのコンビニに迷惑かけたりするかもしれないよ?」 あたしを雇ったとわかると、迷惑電話がくるかもしれない。 嫌な客も増えるかもしれない。 「あのね。世の中には何もないのに人を叩く人って、沢山いるのよ?」 裕子おばちゃんは手を伸ばし、両手であたしの手を握りしめてそう言った。 その手は母親と同じくらい暖かい。 「コンビニに入ると同時に怒鳴って来るお客さんだって、普通にいるのよ」 「そうなの?」 あたしは驚いてそう聞き返した。 「そうよ。クレームなんて日常茶飯事。だからね、嫌な人が来たからって自分のせいだって考える必要はないの」 そう言われて、あたしは母親へ視線を向けた。 「愛奈が自分で決めなさい。執行猶予期間でも、バイトはできるんだから」
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加