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ずっと家に引きこもっているワケにはいかない。 かと言って、1度犯罪者として有名になってしまうと世間の中に戻って行くことは難しい。 あたしはゴクリと唾を飲み込んで接客マニュアルへ視線を向けた。 正直、まだ外へ出て行くには抵抗があった。 人の目が気になるから、帽子を深くかぶらないといけない。 でも……。 この申し出を断ると、これから先ずっと引きこもったままになってしまうかもしれない。 「……わかりました。あたし、コンビニでバイトする」 あたしは裕子おばちゃんの顔をまっすぐに見て、そう言ったのだった。 ☆☆☆ それから数日後、あたしは裕子おばちゃんにレジ打ちを教えてもらっていた。 小さな店内のわりに、やらなきゃいけないことが多くてあたしの頭はパンク寸前だった。 でも、これくらい忙しい方が丁度よかった。 人の目や、咲紀や明日香の事を忘れることができる。 ボンヤリしていたらミスをしてしまうから、バイトをしている間は気を張り、その分嫌な事を忘れることができた。 「じゃあ、次のお客さんの時にレジを1人でやってみようか」 「はい」
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