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和人は落ち着いた様子で、ベッドの隣の椅子に腰を下ろした。
あたしの視界の隅に、和人の姿が残る形になった。
ねぇ、さっきから首を動かすこともできないの。
そう伝えたいけれど、やはり声が出て来ない。
「すごく大きな事故だったんだよ。愛菜は1度車に撥ねられて、落ちてきた時に反対車線から来た車にもう1度撥ねられたんだ。それで生きていたなんて、奇跡だよ」
和人の説明に驚いたけれど、あたしは目を見開くこともできなかった。
あたしの体は一体どうなってるの?
「なんで死ななかったか、わかる?」
そう聞かれても、わからない。
そしてその答えを伝える術も、あたしは持っていなかった。
和人は「よいしょ」と声を出して立ち上がると、鞄の中から何かを取り出した。
それを見て息を飲む。
咲紀の日記だ!!
河川敷で警察を呼んだ後、この日記がどうなったのか知らなかった。
和人がずっと持ってくれていたのだろう。
「俺、ずっと考えてたんだ」
そう言いながら、和人は日記をめくる。
水で濡れたせいで、フニャフニャの形のまま乾いていた。
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