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「これほどの事故で死ななかったってことはさ、こういうことをしても、死なないんだよ?」
和人はそう言い、鞄の中からカッターナイフを取り出してあたしへ見せた。
あたしは必死に左右に首をふって止めさせるが、やはり動くことはできなかった。
「ほら、見て」
和人は口元に笑みを浮かべたまま、自分の野地にカッターナイフを押し当てた。
そのまま、ジリジリとじらすように横へ引く。
真っ赤な血があふれ出し、白いシーツを染めて行く。
切れたカ所からは白い肉が見え、その傷は骨まで到達していることがわかった。
それでも和人は笑っている。
「ほら見て愛菜。俺は死なない」
切られた喉から空気が漏れる音が聞こえて来た。
「愛奈も、これから先ずーっと生き続けるんだ。俺と一緒に何百年も何千年も、ずーっとね……」
恍惚とした表情でそう言う和人。
嫌だ……。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
和人の顔があたしに近づいて来て、血の匂いに吐き気がした。
和人は包帯の上からあたしにキスをする。
ポタポタと落ちて来た血が、あたしの包帯も赤く染めた。
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