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「生意気なんだけど」 あたしはそう言い、咲紀の髪の毛を踏みつけた。 艶やかな黒髪はあたしの上履によって汚れて行く。 咲紀は痛みに顔をしかめた。 「このネタ全然おもしろくないし」 小高美春(コダカ ミハル)がそう言って、明日香からメモ帳を受け取った。 「やめて……」 小説家志望にとってネタ帳は死ぬほど大切なものだ。 安易に人に触れられるのも、あたしは嫌だった。 「こんなもの、捨てちゃえ」 美春はそう言って咲紀のメモ帳をゴミ箱へと投げ入れた。 ボスッと鈍い音がして、咲紀が青ざめる。 「返して!」 そう言って立ち上がろうとするが、あたしが髪の毛を踏みつけているため咲紀は動けない。 「なんでこんなことするの!?」 咲紀は涙目になって懸命に叫ぶ。 なんでかって? そんなの決まってる。 みんな焦っているのだ。 2年生に進級してから入部してきた咲紀に追い越されるかもしれないのだから。 咲紀は元々帰宅部で、小説を書いた経験もなかったらしい。 ただ読書が好きでよく図書室を利用していた。
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