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その時、図書室の先生から文芸部に入部してみたらいいのにと声をかけられて、ここへやってきた。
ただの読書好きと、小説の書き方を学んでいるあたしたちとでは格が違う。
あたし達の方が上のはずだった。
それなのに、数か月前に開催された高校生向けの短編小説コンテストで、咲紀は入賞したのだ。
1年生の頃から頑張って書いて来たあたしたちは、1次審査を通りもしなかったのに。
結果がわかった時の咲紀の顔は今でも忘れられない。
頬を赤くして照れ笑いを浮かべ「こんなの偶然だよ」と、言ったのだ。
謙遜してそう言ったのは理解している。
だけど許せなかった。
あたしたちが毎日勉強して一生懸命書いた作品は箸にも棒にもかからなかったのに、どうしてこんなヤツの作品が入賞なんだ。
こんなの間違っている。
そう思ったんだ。
「ゴミをゴミ箱に捨てて何が悪いの?」
あたしは咲紀を見下ろしてそう言った。
「あんたがやってることはただのお遊びなんでしょ? あたしたちは違う。本気でプロを目指してるんだから」
「あたしだって、今は――!」
「冗談言わないでよね!」
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