10-1 遥人、燃え尽き症候群かもしれない count-one

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10-1 遥人、燃え尽き症候群かもしれない count-one

「遥人! 飛び散ってるじゃない、もう」 「あっ……?!」  大好物のビーフシチューが目の前にあるのに。  手に持ったスプーンですくって、口元に運んだつもりなのに。  どこか傾いたスプーンからポタポタと汁が垂れていく。最後に大きめのビーフがボトリとお皿に落ちて──遥人が着ているスウェットに汁が飛び散った。  見かねた家族にそれを指摘され、我に返った遥人が慌てて近くにあったタオルを手に取る。  夕飯だからと、真っ赤に泣き腫らした目で自室から階下に降りてきた末っ子(遥人)に、日曜で在宅していた両親も二番目の兄・悠人も、何も言わなかった。わざわざ好物のメニューを用意してくれた以外、普段と何も変わらぬ様子で夕食のテーブルを囲む。  とはいえ、どこかボーッとしたままの遥人に痺れを切らしたのだろう。きちんと食べなさい、と。母親はそう言うと、少し困ったような顔をした。
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