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 雅史は玄関にやって来ると、すぐに車が一台駐車場にやって来て、喪主が降りた。まだ三十代後半になったばかりであろう男女は、雅史に気が付くとペコリと頭を下げる。雅史も頭を下げると、二人を迎えた。 「お待ちしておりました、明石(あかし)様。この度は、誠にご愁傷様でございます。心からお悔やみ申し上げます」  二人は軽く頭を下げると、雅史は応接室へと案内した。事務所へと続く道を歩き、事務所に行く寸前の道を曲がると、応接室がある。ドアを開くと、二人を中に入れドアを閉めた。すぐに茶を持った別の葬儀屋がノックして入って来て、ローテーブルにお茶を置く。喪主は葬儀屋に会釈をすると、葬儀屋は「失礼します」と言って部屋を出た。  改めて、前日に行った打合せと全く同じ内容を二人に話すと、喪主は心神喪失したような姿で頷く。その姿に心配になりながらも、雅史は話を一通り終わらせると立ち上がった。 「それでは会場へご案内致します」  二人を先に廊下に出し、自分は後に出る。会場へと案内すると、そこには祭壇づくりを担当している葬儀屋たちが集団となって集まっていた。既に会場の方は準備が整っており、後は祭壇の最終調節ができれば完成だ。  葬儀屋たちは喪主に気が付くと、それぞれが頭を下げる。喪主も同じく頭を下げると、雅史は「こちらです」と言って、椅子に座らせた。すぐに別の葬儀屋に案内されたお坊さんが会場にやって来て、雅史は会釈する。
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