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 昔から葬儀屋は周りから煙たがられていた。その第一の原因となるのは、死者を弔う職業であるため、毎日のように死者と触れあっているという点だ。触れあっている、と言ったら誤解を生むかもしれない。実際に触れあってはいないのだから。何と説明すればいいのだろう。そう、対面している、だ。訂正する。昔から葬儀屋が周りから煙たがられる第一の原因は、毎日のように死者と対面しているからだ。  後は、真っ赤な嘘がひっきりなしに噂として囁かれるのも原因の一つだろう。雅史(まさし)だってそれらさえ無ければ、彼女と長く続き、今頃パパになっていたと思う。  歴代の彼女は雅史が葬儀屋であることを知った瞬間、最初は良かったものの段々と離れていき、別れを告げる。どうしてそんな職業で差別的なことを自分は受けないといけないのだ。だったら辞めてやる、とでも思ったがそれも簡単には辞められなかった。  雅史はこの職業が好きだ。天職だと思ってる。それぐらいの思いで、日々死者と向かい合い、弔っていた。例え、葬儀屋がされるような詩が流れようとも。  この物語はそんな最悪な詩で幕を開けたい。誰がどんな思いでこの詩を書いたかは分からないが、それでも葬儀屋になった以上、そしてそれを見つけてしまった以上、一生背負わないといけないほど大きな意味を持つ詩だ。決して目を瞑って、見ないフリをすることができない。そしてそれは雅史が、一番良く分かっていた。  茶色くなった紙に、ぶっきらぼうな文字で書かれた一つの詩。何度も雅史が嫌というほど目にしてきた詩だ。  嫌いでも、どうしても見てしまう。どこか雅史の心を引かせるインパクトがあった。  耳を澄ませば、何度も暗唱した詩が聞こえてくる。雅史の低くざらついた声が脳内で再生される。葬儀屋の鏡とでも言っていいほどの、ピッタリな詩。それは
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