手袋

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手袋

小さい頃に、親に持たされたひものついた手袋。 手袋の片方がどこかにいってしまわないように、つなぐひも。 …あの手袋、赤かったかも 「…その手袋、どうしたの………?」 「えっ、あ、これ?かわいいでしょ」 「………どこで買ったの」 「んーとね、入試の日に貸してもらった」 …………こんなこと、あるだろうか。 入試の日、もう春間近だというのに雪が降っていて。駅で見かけた、寒そうに手をこすり合わせる女の子。思わず貸してしまったその手袋が。 『ありがとう!』 鼻と耳を真っ赤にして、ニカッと咲う(わらう)君が。 あの時から、ずっと探していた君が。手袋を返してほしくて探していた訳じゃない。ただ、もう一度逢いたくて。 「え…」 こんなに近くにいたなんて。 「ありがとうね」 咲う君はあの頃と変わらない。 でも、もう春はすぐそこに。
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