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気がつくと、森下昭生は見覚えのある場所に立っていた。住宅がひしめき合う郊外の路上。手前の角を曲がって少し歩けば、自宅が見えるはずだ。
だが、自分が見たままの世界にいるのではないということはわかっていた。辺りは妙に薄暗く、地鳴りのような重底音が断続的に大気を震わせている。身に着けているものを見ると、出張中に着ていたグレーのスーツではなく、病院で渡されたライトグリーンの患者衣だった。
ということは、ここが歩の精神世界なのか……
「アキオ」
背後から急に話しかけられ、昭生は驚いて振り返った。
そこには、白いワンピース姿の女が、上下逆さまの状態で宙に浮いていた。
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