プロローグ

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プロローグ

 窓の外では曇天の空から雪がちらつき、パチパチと暖炉で木が燃える音が聞こえる。  ベッドで横たわる一人の少年の周りを人々が囲んでいた。  そして、そこへ半狂乱となった麗人が乱暴に扉を開けて、少年を抱きしめる。 「エミリアン! エミリアン……。お願いだから目を開けて……。その優しい眼を再び我に見せよ! エミリアン!」  今日、第一王子が12歳という若さでこの世を去った。  体には発疹が現れ、高熱にうなされ、1週間と立たずにその翡翠色の瞳は開かなくなった。  亡くなった遺体を必死にさすり、声を上げ泣き喚いているのは、白い粉を顔に塗り付け、紅い紅を差し、宝飾品を見に纏った妖艶な女性だった。  30歳という歳でありながら、その美しさは20歳の娘と変わらない。 「何故じゃ。何故なのじゃ? 何故お前が死んで影が生きておる。何ための影じゃ!」 「王妃様。落ち着かれてください」  王妃と呼ばれる女性は、その美しい顔を歪め、美しく整えられていたはずの髪を振り乱し、家臣達に押さえられながらも、部屋の隅にいた影と呼ばれる少年に掴みかかろうとしている。  銀色の髪に翡翠色の瞳は、第一王子そのものの顔をしていた。 「何故じゃー! エミリアン!」  家臣を振り払った王妃は、暖炉へと走り、そこから燃える杭を取り出して、少年に振りかぶる。  少年は避けてはならない身分だ。指示がなければその場を動くこともできない。  だが、反射的に少し体を動かしてしまった。 「ああ゛ー!!」  少年の悲鳴が部屋中に響き渡る。右目を手で押さえてその場に蹲っている。 「お前の顔など見とうない! すぐにこの者を捨ててまいれ!」  恰幅のいい茶色い髪の男が一人歩出て、少年を抱き上げ部屋の外へと連れ出す。 その感も王妃の泣き叫ぶ声は部屋の中に響いていた。
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