薄明の月

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蒸し暑い夜だった。 昼間の太陽の熱気が、夜になってもなかなか引かない。 そんな夏の夜。 山の中に建てられたわりには、妙に立派な小屋があった。 その中に、大小二つの影が潜んでいる。 大きな影は、壁を背にして片膝を立て、腕組みをしたまま、じっと座っていた。 小さな影は、小屋の中央に作られた囲炉裏のそばで、片手を枕に横になっている。 寝付けないのか、時おり体をもぞもぞと動かしては、小さなため息をついている。 やがて、むくりと体を起こした小さな影は、大きな影に背中を向けて正座した。 そして意を決して、渇いた喉を振り絞り、大きな影に声をかけた。 「……あの、おっ、お話しを、しません……か?」 .
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