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「かっ、かまいません! あの、オレ、あんまり村の外に出たこと無いから、すっ、少しでも外の事が聞ければ!」
「そう、だな……」
思いがけず返って来た返事が嬉しくて、男の方がホッとした表情を浮かべる。
少しだけやわらかくなった空気に安心して、もっと話をしようと、男は更に言葉を重ねた。
「あの、どうして桂花様は、鬼を追って旅をしているんですか?」
そう聞いたとたん、やわらかくほどけかけていた空気が、またスッと冷たくなるのが分かった。
「…………」
長い沈黙が続く。
……しまった。
まずい、怒らせてしまったのだろうか?
でも、何故?
どうしよう。
困った。
もし怒って、このまま小屋から出て行ってしまったら……。
謝ろうかどうしようか、焦って何も言葉が出てこない。男の頭の中で、ぐるぐると言い訳ばかりが浮かんでは消える。
「……鬼を追う理由、か」
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