2人が本棚に入れています
本棚に追加
さすがに慌てて、家族総出で村中を探した。
だが人手を頼んで探しまわっても、村の中にすずの姿は見つからず、翌日、隣の村にも行って聞いてみたが、誰も何の手掛かりも見つからなかった。
もしや、と誰もが最悪の事態を考えた、その時。
「すずは、戻って来ました」
まるでずっとそこにいたかのように、いつの間にか家の中に座っていた。
兄が、祝言のために買って来た赤い打ち掛けを着て。
『何処に行っていたのか』
『何をしていたのか』
みんな心配して口々に尋ねた。
だが……。
「でも、すずは、ただ、笑うだけで……」
何を聞いてもにこにこと笑顔を返すだけで、一言も口を利かなかった。
焦点の合わない瞳はどこか遠くを見ていて、居なくなる前とは明らかに様子が違っていた。
それでも生きて帰って来ただけで良いと、みんな喜んだのに……。
「なんていうか、それから、すず、あんまり飯食わなくなって、でも不思議なくらいキレイになってって……」
.
最初のコメントを投稿しよう!