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「……すず?」
名前を呼ばれ、少女の肩がビクリと震えた。
「どうした? 何かケガしたか? どっか、痛いのか?」
なるべく明るく話しかけながら、そうっと近づく。
少女はゆっくりとこちらを振り返った。
焦点の合わない、おびえた瞳。
血で赤く染まった口元。
いや、それよりも先に目を奪われたものがある。
ーーそれは犬だった。
すずは、血まみれになった犬の首を、その手に抱えていた。
そういえば飯時になると、いつもこの辺をうろつく野良犬を今日は見ていない……などと、少女の腕の中にある犬の首を見ながら、ぼんやりと考える。
「……あっ、うわあああああああっ!」
悲鳴の方が、勝手に口から上がった。
目の前にあるモノが信じられなくかった。
どうして、すずが死んだ犬なんかを抱えてるんだ?
しかも、なんで首だけ?
口の周りが赤いのは、もしかして……。
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