(一)

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(一)

 襟に弁護士バッジをつけた、グレーのストライプの入った茶色のダブルのスーツを着た木野鞍馬が、雑居ビルの二階に入る木野法律相談所の個室で、デスクの背後にある金庫の扉を開けて中を確認していた。金庫の中身は書類や小さな手提げ金庫があるだけで、ほとんど空っぽであった。  本当に大切な物だけをしまうべき、という信条をもっており、木野は金庫にはなるべく物を入れないようにしていた。だから、毎日金庫を開けて、余計な物が入っていないか、必ず確認して整頓していた。 (続く)
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