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「あはははっ、ここまで掘って1つはガラス事割れててもう1つはガラスの瓶しかないとか逆に面白い」
「なんで綺麗に瓶の蓋も中の手紙もないの…笑うしかないじゃん!ガラスの瓶は無傷なのに!」
私たちは発見した蓋のないただのガラスの瓶。
お互い顔を見合わせ思わず笑い出す。
「楽しみにしてたのにメッセージ!」
「もう何書いたのか忘れたわ!」
笑いながら割れたガラスを取り除き掘った土をまた埋め直した。
「あータイムカプセルって思い出に浸るものじゃないの?」
「そうだね普通は、この場合私たちのタイムカプセルの質が低すぎたんだよ」
安っぽいガラスの瓶を見つめる。
「でもさ、私たちの約束はちゃんと果たせたね」
「そうだね、本当は成人する時までに疎遠になってたらどうしようかと思ってた」
涼花のポツリとした呟きに私は思わず涼花を見る、真剣に私の手にある瓶を見つめるその眼差しは強く優しかった。
「タイムカプセル作戦は失敗したけどさ、私たちはずっと親友って言ったし本当にその通りになったし、……私たちの思い出はタイムカプセル以上にたくさん心の中にあるよ」
「…ははっ夏果にしては真面目なこと言うー、似合わない」
「涼花ー!!?」
涼花の辛辣な言葉に思わず名前を呼んでいたが「でも」と遮られる。
「でもまたこうやって夏果とたくさんの思い出を集めていくのは悪くないかな」
「……涼花が言っても似合わないよ」
「ひどい!!」
これは私の照れ隠しだ、長年の仲になるとはっきりとした言葉を真剣に受け止めるのが恥ずかしくなる。
だからいつもからかうようにしか言葉が出てこない。
「ありがとう涼花、私は涼花と親友としてこれからも思い出たくさん作っていきたいよ」
心の中で呟く。
「何か言った?」
「え!?…何も言ってないよ、さぁそろそろ帰るか」
心の中で呟いたつもりが声に出していたらしい、生憎涼花には聞こえていなかったのが幸いだ。
土で汚れた軍手を取りすっかり夕方の空を見上げる。
探し物は見つからなかったけど思い出は私たちの中で永遠に残っている。
これからもずっと。
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