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「はははっ、こいつマジで抵抗してこんな」
「馬鹿だな。地底人守るためとか」
「ホモじゃん」
校舎の裏から笑い声が聞こえてくる。そっと覗いてみると、川西は地面にあおむけに倒れていた。体は傷だらけで、意識があるのかどうかもよくわからない。
「川西くん!」
僕は思わず大声をあげて飛び出していた。川西を取り囲んでいた同級生たちが、一斉に僕を見る。
「なんだ地底人か」
林がにやりと笑って言った。
「も、もうやめてよ!僕ならいくら殴られてもいいから、川西くんを巻き込まないで!」
「誠に申し訳ないんだけど、俺らもうお前に興味ないんだわ。川西が俺らに殴られたいって言うからさあ」
川西がゆっくりと顔を起こし、僕の方を見た。
「廉…」
「川西くん!」
「廉、帰れ。お前には関係ない」
「帰らないよ。僕は川西くんを助けたい」
僕がそう言うと、不良たちはゲラゲラ笑った。
「助けたい〜?お前に何ができるんだよ」
「地底人のくせに調子乗ってるな」
「地底に帰れー!」
「まあまあまあ」
林がにやにやしながらみんなを静めた。
「じゃあこうしよう。地底人が裸になってオナニーしてくれたら、今日のところは勘弁してやるよ」
「えっ!」
裸になってオナニー?
林はスマホを取り出し、僕の方に向けた。
「ほら、記念に録画しといてやるから、早くやれよ」
「は…?」
動画なんて撮られたら、後でどうなるかわかったもんじゃない。
「む、無理だよ」
「無理じゃないだろ?オナニーくらいしたことあるよな?」
「え、いや…」
「やりたくないんなら別にいいよ。でも川西はどうなるだろうなあ」
ピコン
林が録画をスタートさせた。
「ほら、やれよ」
林の目がぎらぎらと光っている。僕をいじめる時によくしている目。林が本気で僕のオナニーに興味があるとは思えない。きっととにかく誰かを支配して、みっともない姿にしたいだけだ。
「…わかった」
別にいいか。
これで川西が助かるなら、ちょっと恥ずかしいけど、大したことじゃない。どうせ僕はいじめられているんだから、これ以上何されたって同じだ。
僕は深呼吸して、ズボンのベルトを外そうとした。
「やめろ、廉!」
川西の声が小さく聞こえる。
「やるよ。僕、頑張るよ」
「ったく…しゃあねえな」
ドカっと誰かが殴られる音がした。
「…川西くん?」
気がつくと、目の前で林が倒れていて、その後ろには川西が立っていた。
「な、なんで?川西くん、動けないんじゃ…」
「お前を守ってやるって言っただろ?肝心な時に動けなくてどうするんだよ」
川西は得意げな顔をして僕の頭を撫でた。
そして怒涛の勢いで林の仲間たちの股間を蹴り上げると、全員悶絶しながら逃げていった。
「ははっ、あいつら弱すぎ」
「川西くん、そんな体で…」
「ああ、これ?やられたフリだよ。これくらい、痛くもなんとも…ッ」
川西はフラーっとその場にしりもちをついてしまった。
「川西くん!」
「あはは…カッコつけたかったんだけど。普通にめっちゃ痛いわ」
「どうしてこんなことしたの?」
「もうお前と一緒にはいられないからな。俺がいなくてもいじめられないようにしとかないと」
「そ、そんなこと…言わないでよ…」
僕は地面に膝をつき、川西の目を見た。
「あのさ…授業中膝に乗せたりとか、いちいちトイレついてきたりとか、そういうのは正直迷惑だったんだけど」
「は?」
「あ!言っちゃった!え、えっと、でも、川西くんが一緒にいてくれなくなるなんて、嫌だよ。初めて僕に…と、友達みたいなのができたって思ったのに」
「友達みたいなの、ねぇ」
や…やっぱり、違うのかな。友達って、こういう感じじゃないのかな…。
不安になってうつむくと、川西は僕の手を取った。
「俺、お前のこと好きなんだけど、それでも友達でいてくれるのか?」
「好きっていうのは…」
「抱きしめたいとかキスしたいとか、そういうこと」
「あ…えっと…」
川西の手は少し汗ばんでいた。どう答えたらいいのかわからなくて黙っていると、僕の手を握る力がほんの少し強くなった。
あんなに強引な川西でも、緊張することがあるのかと思うと、心臓がギュッとつかまれるような感覚がした。
「僕、強くなるよ」
「え…?」
「強くなって、いつか僕の方が川西くんのことを守れるようになる」
「うん」
「僕も川西くんが好きです」
川西の体を引き寄せ、背中に手を回す。
僕たちはそのまま、お互いの体温を感じながら、ただずっと抱き合っていた。

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