α0 ことの、はじまり

2/3
前へ
/222ページ
次へ
「……それで、どんな茶番に付き合わせようってんです?」 ──セントレーニア魔法士官学校、その学長室にて。 「夢見てんじゃねーんですよ?」 とある二人の会合が行われていた。 片方は……真っ白でふわふわなロングヘアに羊の耳を持ち、白ワイシャツのようなデザインワンピースを着ている、眠たげな目をした気怠げな雰囲気の女性である。 もう片方は、なんとただのぬいぐるみである。それが高そうなソファーに座っているのだが……驚くべきことに、それは動いて喋っていた。 「いやいやそんな、茶番だなんてとんでもない。あなたさまのお力を借りようっていうのに、つまらない舞台にするつもりなんかありませんよ」 やたら(うやうや)しい態度なのが逆に神経を逆撫でにする気もするが、羊の女性はふすんと鼻を鳴らすだけにとどめる。 「どうだか……てめーのやることに付き合わされて、まともだったことがそもそもねぇんですよ……学園長、須藤メアリ?」 「……ぼくはただのスーちゃんですから」 『中の人』を言及されたぬいぐるみ(スーちゃん)は、バツが悪そうに視線を落とす。 「それに……あなたの助力が必要なのは、本当のことなんですよ……魔法催眠術師、岡田メフィ?」 それでいて言うことはきっちり言うスーちゃんに対して、女性(メフィ)もまたふすんと鼻を鳴らした。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加