四つ葉のクローバー

3/14
前へ
/14ページ
次へ
「チューンナップ完了っと。やっと準備ができた」  クローネはふうっと息を吐くと、スパナを持った腕で額の汗をぬぐった。 「さてと……あとはこのクロノドライバーを設定すれば作業終了だ」  胸ポケットから懐中時計を取り出すと、竜頭(りゅうず)をクリクリと回した。  コーヒーの入ったフラスコ瓶を片手に、改造したばかりのブルーマーにまたがる。 「それにしても面倒な依頼がきたものだ。でもまあ、これが完遂できれば俺もしばらく安泰だ」  フッと笑いながら、コーヒーを一口飲み込んだところで、思わぬ轟音が耳に飛び込んできた。  ――グァシャリガンガラガン――  クローネは思わずコーヒーをぶーっと噴き出す。  おそるおそる後ろを振り向くと窓のあった場所に大きな穴が空き、瓦礫が散乱していた。風がビュービューと吹き荒れ、部屋に置いてあった図面が宙を舞っている。  そのすぐ横に大破したブルーマーと女性が転がっていた。 「な、何事だ?」  女性はすぐに起き上がると、クローネが乗っているブルーマーに近づいてきた。  クローネのすぐ後ろにまたがると、朱色に光るマジックソードを彼の首元にかざして脅した。 「すぐにブルーマーを発進させて」 「うん? どういうことだい?」 「おとなしく、エレメンタル鉱石を返しなさい」  声の聞こえるほうに視線を向けると、穴の向こうに二頭の大きな龍が浮いているのが見えた。 「エレメンタル鉱石……?」 「早くブルーマーを出しなさい!」  女性は手を震わせながら、もう一度マジックソードをクローネの目の前にかざした。 「出せと言われても、これ普通のブルーマーじゃないんだけど……」 「どこでもいいから、とにかくここから逃げて!」 「どこでもいいのかい? まあ、それならそれで。後悔するなよ」  クローネはほうき棒に付いたグリップギアをカチカチを切り替えると、ブルーマーは蛍のような淡い光に包まれ、目の前に漆黒の闇が現れた。 「しっかりつかまってろよ、行くぞー!」  ブオンという音ともにブルーマーは急発進して、闇の中に突っ込んでいった。  一瞬にして闇は消え、召喚龍たちは辺りを見回したが、彼らの姿はもうどこにも見当たらなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加