108人が本棚に入れています
本棚に追加
「チューンナップ完了っと。やっと準備ができた」
クローネはふうっと息を吐くと、スパナを持った腕で額の汗をぬぐった。
「さてと……あとはこのクロノドライバーを設定すれば作業終了だ」
胸ポケットから懐中時計を取り出すと、竜頭をクリクリと回した。
コーヒーの入ったフラスコ瓶を片手に、改造したばかりのブルーマーにまたがる。
「それにしても面倒な依頼がきたものだ。でもまあ、これが完遂できれば俺もしばらく安泰だ」
フッと笑いながら、コーヒーを一口飲み込んだところで、思わぬ轟音が耳に飛び込んできた。
――グァシャリガンガラガン――
クローネは思わずコーヒーをぶーっと噴き出す。
おそるおそる後ろを振り向くと窓のあった場所に大きな穴が空き、瓦礫が散乱していた。風がビュービューと吹き荒れ、部屋に置いてあった図面が宙を舞っている。
そのすぐ横に大破したブルーマーと女性が転がっていた。
「な、何事だ?」
女性はすぐに起き上がると、クローネが乗っているブルーマーに近づいてきた。
クローネのすぐ後ろにまたがると、朱色に光るマジックソードを彼の首元にかざして脅した。
「すぐにブルーマーを発進させて」
「うん? どういうことだい?」
「おとなしく、エレメンタル鉱石を返しなさい」
声の聞こえるほうに視線を向けると、穴の向こうに二頭の大きな龍が浮いているのが見えた。
「エレメンタル鉱石……?」
「早くブルーマーを出しなさい!」
女性は手を震わせながら、もう一度マジックソードをクローネの目の前にかざした。
「出せと言われても、これ普通のブルーマーじゃないんだけど……」
「どこでもいいから、とにかくここから逃げて!」
「どこでもいいのかい? まあ、それならそれで。後悔するなよ」
クローネはほうき棒に付いたグリップギアをカチカチを切り替えると、ブルーマーは蛍のような淡い光に包まれ、目の前に漆黒の闇が現れた。
「しっかりつかまってろよ、行くぞー!」
ブオンという音ともにブルーマーは急発進して、闇の中に突っ込んでいった。
一瞬にして闇は消え、召喚龍たちは辺りを見回したが、彼らの姿はもうどこにも見当たらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!