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「え? ここはどこ?」
クローネの脇腹に腕を回した女性は、流星が飛び交う無限の闇を、呆然とした表情で眺めていた。
「時空間トンネルだよ。だから言ったじゃないか、普通のブルーマーじゃないって」
「これって……」
「タイムブルーマー、時間魔法をカスタムして魔ほうきに組み込んだんだ。今は時間旅行中」
「……どこに向かっているの?」
「過去の世界。クライアントから面倒な依頼があってね。過去に行かないと手に入らないものを探しにいくところ」
「何を探しに?」
「聞いてばかりだけど、少しは君のことも教えてくれないかな? さっきエレメンタル鉱石がどうとか聞こえたけど」
「うるさい、あなたは黙って操縦しなさい」
マジックソードでチクンと首元を突くと、その刃先はボロボロと崩れ落ちた。
「え?」
「俺これでも上級魔導技術者だからさ、攻撃に対する自動障壁を開発してあるんだ」
よく見ると、クローネの首元には無数の呪文が刻まれていた。
「……幼い妹の命を救うためにエレメンタル鉱石を盗み出したの。それで追われている」
女性はガクリと意気消沈して、首からぶら下げた鉱石をはめこんだペンダントを見せた。
「宇宙の五大要素を操る石、たしかに高価なものだからな。今流行りの魔染病か?」
「そう、この鉱石の力がないと病気がよくならない」
「しかしいずれは捕まるんじゃないのか?」
「私はどうなってもいいの。あの子の命さえ助かれば……」
「君の名は?」
「私はアリア、現代に戻ることはできるの? 早く妹の元にこの鉱石を持ち帰りたい」
「俺の用事が済めば、すぐに現代に戻るよ。それまでは一緒に付き合ってもらう必要があるな。俺はクローネ、今はしがない探索者だ。おっと出口が見えてきた、軽い衝撃をくらうかもしれないから、つかまっとけよ」
暗闇を照らす光が見えてきた。ブルーマーがその光の中に飛び込むと、チコチコチコと時が巻き戻る音が耳の中で鳴り響いた。
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